足場に関する労働安全衛生規則が改正予定です。~「一側足場」の使用が制限されます!~

厚生労働省より足場に関する法令改正案が公開されました。

建設工事の安全対策で必要不可欠なものが足場です。

しかし下記のとおり、足場からの墜落による死亡事故が今もなお年間100件程度発生していることから、足場に関する法令改正が行われるようです。

1 改正の趣旨

 建設業における死亡災害は墜落・転落災害が最も多く、今なお年間100人程度が死亡している状況にあり、実効性のある災害防止対策を講ずることが急務となっています。
 このため、「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合報告書」(令和4年10月28日公表)を踏まえ、足場からの墜落・転落災害を防止するために、事業者が講ずべき措置等について、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)を改正するものです。

厚生労働省HPより引用
厚生労働省HPより引用

では予定されている改正のポイントはどのようなものなのでしょうか見ていきましょう。

改正のポイント①一側足場の使用範囲を明確化

原則として、本足場の使用が義務付けられる予定です。

(1) 事業者に対し、幅が1メートル以上の箇所において足場を使用するときは、原則として本足場を使用することを義務付け、一側足場の使用範囲を明確にします。

厚生労働省HPより引用

まず本足場とは下の図のように、垂直方向に伸びる支柱が2本あり、構造的に安定しています。

また、両側に手すりなどを設けることができるため、墜落防止に有効な対策となっています。

本足場の図です
厚生労働省HPより引用

それに対して、一側足場とは下の図のように、垂直方向に伸びる支柱が片側だけで構成されるものをいいます。

もちろん、支柱が1本のため構造の安定度は本足場には劣ります。

狭いスペースにも設置することができるため、戸建て住宅の外壁塗装などに用いられることが多くなっています。

下の図では、手すりが設置されていますが、一側足場には法令上、手すりの設置義務がないことから、墜落事故につながっていると考えられます。

厚生労働省HPより引用

工期、費用の面からは一側足場のほうが有利であっても、今後は設置できるスペースがあるのならば本足場の設置をしなければなりません。

こちらについては、令和6年4月1日施行予定となっていますので、今のうちから取引先や関係行者と情報共有をしておきましょう。

改正のポイント②足場点検者の指名と点検者名の記録

こちらについては、以下のように改正予定です。

(2) 足場の点検が確実に行われるようにするため、次の措置を講じます。
① 事業者または注文者に対し、足場の点検を行うときは、点検者をあらかじめ指名してその者に点検を行わせることを義務付けます。
② 事業者または注文者に対して、強風、大雨、大雪等の悪天候等又は足場の組み立て等の後の点検を行ったときは、点検者の氏名を記録し、保存することを義務付けます。

厚生労働省HPより引用

労働安全衛生規則第567条、568条ではでは以下のように、その日の作業開始前、足場の組立て、解体及び一部変更した後並びに悪天候の後に足場用墜落防止設備(手すり、中さん及び幅木等)等の点検が義務付けられています。

(点検)

第五百六十七条 事業者は、足場(つり足場を除く。)における作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無について点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

 事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において、足場における作業を行うときは、作業を開始する前に、次の事項について、点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

 床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態

 建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部の緩みの状態

 緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態

 足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無

 幅木等の取付状態及び取り外しの有無

 脚部の沈下及び滑動の状態

 筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付状態及び取り外しの有無

 建地、布及び腕木の損傷の有無

 突りようとつり索との取付部の状態及びつり装置の歯止めの機能

 事業者は、前項の点検を行つたときは、次の事項を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間、これを保存しなければならない。

 当該点検の結果

 前号の結果に基づいて補修等の措置を講じた場合にあつては、当該措置の内容

(つり足場の点検)

第五百六十八条 事業者は、つり足場における作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、前条第二項第一号から第五号まで、第七号及び第九号に掲げる事項について、点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

労働安全衛生規則

こちらの条文に誰が点検するのかを明確にし、点検記録に点検者の名前を残すことが義務付けることが追加される予定となっています。

こちらは令和5年10月1日施行予定となっています。

最後に

墜落は今もなお、死亡労働災害の多くを占めています。

それに伴い、足場に関する労働安全衛生規則が改正予定となっています。

しかし法律で決められているから対策するというのはなく、事業者自らリスクアセスメントを行い対策を決定するという形があるべき姿です。

日本の労働安全衛生法の中でも、リスクアセスメントの実施義務が明文化されていることから今後はリスクアセスメントの重要性が高まっていきます。

特に、事故が起きた後の民事裁判ではリスクアセスメントの実施の有無やその内容が焦点なることが考えられます。

私たちは労働安全などに関するリスクアセスメントも行っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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