火災予防の民主化運動
日本の消防法上、工場や倉庫には原則としてスプリンクラーの設置義務はありません。
しかし、多くの外資系の工場や倉庫ではスプリンクラーの設置義務はないのですが、自主的にそれもNFPA(全米防火協会)基準のスプリンクラーを設置してることがあります。
ある工場の例では、水源は13万リットルのタンクが2基あり、圧倒的な放水量で火災を消し止めるという思想のもと設計されたスプリンクラーが設置されています。
その工場には一部ラック倉庫があり、こちらには消防法によりスプリンクラー設置義務が課され、日本の基準により設置されています。
しかし、NFPA基準に比べると能力が小さいという事で本国の監査では認められず、いわゆる特例のようなもの免除されている状況とのことです。
なお、消防法が強固になる以前は日本でもNFPA基準のスプリンクラーが認められていたそうです。
最近、アメリカの防火に関するトレーニングを受けたのですが、資料の中には日本の火災事例が載っており、その内容はラック倉庫火災においてスプリンクラーの能力が小さいことで消火ができなかった、また日本のスプリンクラーに関する規格の改正は非常に頻度が少なく、技術が古いままであるというものでした。
これを見た私は、第二次世界大戦でアメリカ軍に冷静に分析されていたことを知った捕虜の旧日本軍の兵士のような気分になりました。
柔軟性に欠ける法律で設備等の規格を縛る日本の法体系は世界的に珍しいようで、あらゆることにおいてデジタル化などの技術革新が進まないのもこのあたりに原因がありそうです。
そして新しい技術は新しい産業を生み、業界にも好循環をもたらすことに違いありません。
全て海外のことが正しいとは思っていませんが、海外や他分野のいいところを柔軟に取り入れることで、日本の火災予防は世界一のものになると信じています。
NFPAは民間の非営利団体であり、彼らが作った基準をアメリカをはじめ世界中の消防組織が採用しています。
まさに人民の人民による人民のための防火組織です。
この「火災予防の民主化運動」の一つとして取り組みたいのが、かねてから私が妄想しているオンライン防火管理講習と日本版火災リスクアセスメントの確立です。
市民が集まり、市民が求める講習や市民自身が火災リスクを考えるフレームワークを提供できたら最高ではないですか?
NFPAについて日本語で紹介しているコラムがありましたので、興味があればぜひ一読ください。
アスクル倉庫火災に潜む、日本の防火体制のタブー --- 牧 功三3月10日付でアゴラに掲載された記事で日本の防火の特殊性にふれたが、今回はもう少し詳しくかつ遠慮せずに大胆に述べていこうとagora-web.jp